HOME > 商品詳細2

点字こうめい No.92

<特集2>

視覚障がい児へ「学びの保障」を
筑波大学教授 佐島 毅<さしま つよし> 氏に聞く


 盲学校などに通う視覚障がいのある子どもたちの教育環境の現状や課題について、視覚障がい教育の第一人者である筑波大学の佐島毅教授に聞いた。


Q、視覚障がい教育の現状と課題は。
A、視覚障がいのある子どもは、「黒板が見えない」「通常の教科書では読めない・読みにくい」といったハンディがあるため、見える子と同じ環境に置かれることは、学ぶ土俵にすら上がれないことを意味し、それを補う手立てが必要です。しかし、現在の教育制度では、点字教科書や拡大教科書は公的に保障されてはいるものの、教科学習で用いる、それ以外のさまざまな教材は十分に整っていません。例えば、視覚障がい児向けの算数セットや図形、地図などの教材は、そのほとんどが現場の教員の創意工夫、つまり手作りに委ねられています。見える子どもたちは、数百円の教材費をクラスで集めることで洗練された教材を全員が手にして学んでいる一方で、見えない子どもたちの教材は教員の熱意に依存するところが大きく、結果として盲学校に通う子どもの間でも、教育の質に差が生じかねない現状にあります。


Q、教員人事の制度的な課題も大きいと聞きますが。
A、視覚障がい教育は極めて高い専門性が求められる分野です。しかし、日本の公立学校の人事制度は、数年単位で教員の異動を繰り返します。盲学校は47都道府県のうち37府県、79%が「1県1校」のため、異動により、それまで培ってきたノウハウが断絶し、同僚などにも引き継がれにくいといった問題があります。盲学校の教員で視覚障がい教育の免許を持っているのは47.9%(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「2023年度特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許状保有状況等調査結果の概要」)であり、教員の専門性の維持・継承を困難にしている構造的な課題を、ボランティア団体などが、必死になって埋めているのが実態です。米国や欧州のように、視覚障がい児の教育の専門性に立脚した視覚障がい児のための教員採用や長期的なキャリア形成を専門機関が行う仕組みが不可欠です。


Q、今後、国や行政が取り組むべき対策は。
A、2点あります。1点目は「通学の保障」です。盲学校が県内に1校程度しかない地方も多く、学校から遠方に住む子どもは寄宿舎に入るか、親が毎日、往復数時間をかけて送り迎えをするという選択を迫られます。海外ではタクシー通学を公費で保障している国もあります。2点目は「教材支援センター」の設置です。現場の先生が一人で悩むのではなく、必要な時に必要な教材をすぐに提供できる公的なシステムの構築が不可欠です。
 国が責任を持って専門性の高い人材を育成・配置し、子どもたちがどの地域に住んでいても、個別最適な学習機会を得ることのできる仕組みを構築することによって、公平に学べる権利を視覚障がい児に保障することが望まれます。