HOME > 商品詳細2

点字こうめい No.91

話題

音や振動などで周囲の状況を認識できる装置「SYNCREO(シンクレオ)」

~高松の新興企業が開発~

 視覚障がいのある人が、周囲のサポートがなくても、自分の力で安全に、そして自由に外出ができる製品が開発され、来年にも本格販売される予定で注目を集めています。

 その装置(デバイス)は、「SYNCREO(シンクレオ)」です。名前は、「共に・一緒に」を表す「SYN(シン)」とラテン語で「創造」を表す「CREO(クレオ)」を組み合わせたもの。装置は、目の上の額の辺りに着ける装置と、箱形の装置で構成。額の辺りに着ける装置の前方には、独自開発したカメラが取り付けられており、周囲を撮影して対象物までの距離を測り、音と振動で感覚的に利用者に通知。対象物に近づくと、振動の感覚が短くなったり、音の大きさが変わったりします。

 音と振動による通知は、周囲の空間状況を把握できるだけでなく、テーブルの上のグラスなどの食器の位置や、目の前にある対象物の大きさ、形、人の背格好まで認識することが可能。また、道に迷ったときなどには、カメラが捉えた映像を遠隔にいる人と共有して会話ができるほか、ドライブレコーダーのような録画・再生機能も備わっています。

 さらに、この装置には、画像や音声など、さまざまな形式のデータを扱える「マルチモーダルAI(人工知能)」を生かして、さまざまな情報を伝達する機能があるのも特徴です。郵便物の読み上げや、買い物での商品や価格の認識も可能になり、視覚障がいのある人の日常生活の質を格段に向上させると期待されています。

 開発したのは、香川県高松市内で視覚障がい者向けの装置開発を手掛ける「株式会社Raise the Flag.(レイズ・ザ・フラッグ)」。現在、代表取締役CEOを務める中村猛<たけし>さんが、2017年に設立しました。中村さんが起業したのは、テレビ番組で「目が見えないことは不便なだけで、不幸ではない」という全盲の少女の言葉を聞いたことがきっかけでした。「不便なだけならば何とかできる。そういう人たちの目の代わりになるような装置をつくろう」と決意したことが、中村さんのモノづくりの原点となっています。

 同社はこれまで、当事者の声を聞きながら多様な製品を開発してきました。例えば、熱い飲み物などがこぼれないようカップに指を入れて量っている視覚障がい者がいると聞いて、20年に開発・製品化したのが「みずいろクリップ」です。コーヒーカップなどの容器に取り付けることで、液体が注がれると水位を音で教えてくれるほか、対象物に押し当てると色も教えてくれます。色は22色まで判別でき、これまで1000本以上を販売したといいます。

 そして、同社の設立時から主力商品にすることをめざして取り組んできたのが、視覚障がい者が障害物や段差などを環境認識できるデバイスの開発でした。18年ごろに、一応の完成を見ましたが、使い勝手が良くないなど、課題も多く出てきたといいます。その後も、当事者に体験してもらいながら声を聴取し、徐々に精度を高めて完成に至ったのが、今回のSYNCREOでした。

 現在、開発は最終フェーズに入っており、来年中には本格販売を予定。1台当たりの販売価格は税込み50~60万円を見込んでいます。