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点字こうめい No.79

<特集>
情報保障、災害時に役立つラジオ放送
JBS代表 川越利信氏に聞く

 ――JBSが果たす役割は。

 高齢化が進む現在、情報保障の観点から活字を音訳して必要な人に届けていくべきだと考えています。

 私は、人が社会生活を送る上で欠かせない情報には2種類あると考えます。一つは新聞など活字として公表されたものです。これは障がいの有無にかかわらず、アクセスできないと社会変化に対応できず、弱い立場に置かれます。この点、JBSでは一般に公開されている活字情報をラジオという形に変換して、視覚障がい者に届けています。

 もう一つは、一般のメディアが扱わない視覚障がい者に直接関わる生活面での情報です。例えば、大学受験や就職の仕方、日常生活における新鮮な食材の選び方や安全な調理方法などで、JBSでは、点字・音声文化をベースにした生活情報に関するさまざまな番組制作も行ってきました。

 ――1995年の阪神・淡路大震災では、JBSの放送が大いに活用されたそうですね。

 当時、JBSは大阪と東京にスタジオがあり、新聞の朝刊を大阪で、夕刊を東京のスタジオから放送していました。しかし、震災で大阪スタジオは使用できなくなり、放送を全て東京から行うとともに、安否情報を現地から送ってもらい、JBSで放送して、ボランティアにつなげたことで、1800人超の安否確認に貢献することができました。

 世界から多くのメディアが現地に来ましたが、全国、世界に向けての情報であって、被災者に直接役立つ情報ではありませんでした。災害の時には電話による情報伝達に限界はありますが、ラジオは強いと感じました。

 ――JBSの当面の課題は。

 やはり、資金面でのやりくりは大変です。盲導犬は身体障害者補助犬法ができて以降は、テレビでも取り上げられるなどして寄付金も集まりやすくなってきましたが、それでも30~40年を要しました。2019年6月に視覚障がいのある人の読書環境を整える読書バリアフリー法が成立しましたが、その対象は点字図書などに限られており、JBSが行っている新聞の音訳などの著作権には関わりがありません。今後も文化庁への働き掛けなど、著作権の課題はクリアしていきたいと考えています。

 その点、オーストラリアは先進国で、視覚障がい者のための著作権料が無料だったり、専用ラジオ放送の初期費用は連邦政府が負担するなど支援が手厚いのです。日本にも知的能力や認識能力に異常はなくても、学習が困難なディスレクシアの人などがいます。そうした人たちのためにも、活字文化を音声に変換するラジオ放送の存在意義は、ますます大きくなっていくのではないでしょうか。