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点字こうめい No.90

話題
専用スタンド「よむん台」 スマホでの文書撮影に便利


 スマートフォン(スマホ)のカメラで印刷物などを撮影し、文字認識アプリなどで読み上げさせるための専用スタンド「よむん台<だい>」が、視覚障がい者らから「便利だ」と好評です。

 「よむん台」はダンボール製で、1枚紙を折りたたむようにして組み立てるシンプルな構造です。市販されており、販売価格は税込み2178円。天板部にスマホを載せてレンズを下に向けて置き、読みたい文書を台の下に固定して撮影します。使用時の台の高さは約30センチで、幅と奥行きは20センチほど。重さも約130グラムとコンパクトで、外出先でも使えるように、A4サイズに折り畳んで持ち運びができるのが特長です。

 「よむん台」を考案、開発したのは、北九州市内でソフトウエアの開発や福祉用具の販売などを手掛ける株式会社「LGCS」の代表取締役の大場敏史<としふみ>さんです。大場さんによれば、類似製品はこれまでにもあったものの、重くて持ち運びしにくいプラスチック製がほとんどでした。また、撮影した文書を読み上げるスマホアプリの利用は年々広がる一方で、視覚障がい者にとっては、アプリを使おうにも、スマホのカメラに収まるように書類を置くのが難しいといった課題が多かったといいます。健常者でも、スマホのカメラで文字情報を音声に変換する機能を使い、書類や郵便物などを確認する人が増えており、専用スタンドへのニーズは潜在的に高いものでした。

 大場さん自身も弱視の視覚障がいがあり、市内の視覚障がい者団体の運営に携わっていた関係で、ある時、当事者から「もっと便利で使いやすいものがあったらいいのに」との声を聞きます。そこで大場さんは、2017年頃から、本格的に企画、開発を進めるようになります。

 大場さんは、ダンボールの製造企業などにも相談し、視覚障がい者の意見も聞きながら製作を進めました。製作の過程で、書類やスマホの設置が簡単にでき、手軽に持ち運べるスタンドができあがり、組み立てを省くために一体型の折りたたみ式に仕上げました。試作品では、書類に影が出て、うまく撮影できないこともありました。そこで、スタンドの側面に採光用の丸い穴をあけ、本体を白くして光量を確保するなどの工夫も加えました。こうした試行錯誤を重ね、約2年がかりで製品化に、こぎ着けたのです。

 「よむん台」は、19年7月に、インターネットの通販サイトなどで販売を開始。すると、視覚障がい者だけでなく、視覚以外の障がいのある人や、仕事で大量の書類を撮影する人からも多くの反響がありました。「よむん台」は、「機能、素材、価格のバランスが非常に良い」と評価され、日本デザイン振興会主催の19年度の「グッドデザイン賞」を受賞しました。昨年10月からは、「日本ライトハウス情報文化センターエンジョイ!グッズサロン」(大阪市西区)でも販売されています。

 大場さんは、「よむん台」について「まだ知らない人がたくさんいると思うので、知ってもらって、たくさんの人に使ってもらいたい」と語ります。現在、「よむん台」に続く作品も開発中。文字など拡大して画面に映し出し、読み書きをサポートする機器で、「その名も『拡ん大<かくんだい>』です」と意気軒昂に語る大場さん。さらなる高みへ、これからも挑戦は続きます。