HOME > 商品詳細2

点字こうめい No.90

<特集1>
「点字」考案から200年 。視覚障がい者の読み書き支える


 「点字」は縦3点・横2点の合計六つの凸点の組み合わせで、五十音や数字、アルファベットなどの文字を表したものです。この「6点式点字」は、1825年に、フランス人の視覚障がい者、ルイ・ブライユが考案してから、今年で200年を迎えます。点字は、視覚障がいの人たちが、読み書きをする手段として広く普及してきました。点字の歴史とともに、活字で書かれた文章を点字にする「点訳」ができる人を増やす大阪市の取り組みなども紹介します。


■現在の点字ができるまで
 目の不自由な人へ文字を伝えようとする方法の起源は古くからあり、点字が考案される前は、「アルファベットを木彫りにする」「ろう板に刻印や糸を用いて文字を刻む」などの方法が活用されていました。
 19世紀前半のフランス。幼少の頃に失明したルイ・ブライユが通っていた当時の盲学校でも、点字ができる前までは、生徒たちは「浮き出し文字」という、盛り上がった線をなぞった文字の形で、読み取りを行っていました。しかし、この方法は、単語を一つ読み終えるだけでも時間がかかります。また、浮き出し文字の書物は学校の外にはないため、学校を卒業してしまうと浮き出し文字の読み方を忘れてしまうという問題もありました。
 ルイ・ブライユが12歳となった1821年。軍人が夜間に触って暗号を読むための「夜間文字」が盲学校に導入されました。夜間文字は12点から構成されるものでしたが、目の見えない人のための文字として活用されるには、まだ不十分でした。ルイ・ブライユは、より使いやすい方式に改良しようと、学校の授業の合間を縫っては、クラスメートと議論しながら実験と研究を重ねました。そして25年に、六つの点から構成される点字方式が考案されたのです。
 ルイ・ブライユの考案した6点式の点字は現在、世界中の国々で使われるまでに広がりました。利用している国数は、『世界点字便覧』によると、2013年時点で、142カ国・133言語に上ると言われています。

■日本語の点字が生まれた
 明治時代、ルイ・ブライユの考案した点字を基に、「日本語の点字を作りたい」と研究したのが、盲学校の教師として働いていた石川倉次<いしかわ・くらじ>です。石川は、ローマ字方式の点字を、日本の同僚や生徒の協力も得て、五十音に合うようにしました。この石川が考えた点字は、1890年(明治23年)11月1日、日本点字として盲人教育に採用されました。この日は現在、「日本点字制定記念日」とされています。
 また、当時、「きゃ、きゅ、きょ」などの拗音<ようおん>は書く文字として使っていなかったため、当初の点字には拗音は存在していませんでしたが、1898年に加えられました。
 点字により、視覚障がい者は、読み書きが容易になり、社会とのコミュニケーションが図りやすくなりました。暮らしの中でも、階段の手すりや駅の券売機、家電製品の操作パネル、飲料缶などに点字は広がり、視覚障がい者の生活の質を高め、支え続けています。

■活字の著作物を点字にする「点訳奉仕員」
 こうした点字の担い手の一つが、活字の著作物を点訳などする「点訳奉仕員」です。健常者が点字の書き方を学び、視覚障がい者を支える活動として1940年頃から始まった制度で、現在では全国の自治体や点字図書館、社会福祉法人で毎年、点訳奉仕員の養成講座を実施しています。
 そのうちの一つ大阪市では、毎年1月、8月の年2回に分けて、養成講座の初級講座を設けています。講座は全10回で、訪れた日は、点字の書き方や、文章を書く際の点字の区切り方を講師が説明。大阪市視覚障害者福祉協会点字友の会のメンバーも書き方を教えていました。
 受講した60代女性は、高校生の時のクラブ活動が点字部だったと語り、「何歳になっても、人のために頑張りたい。より高度な中級講座でも学び、視覚障がい者の役に少しでも立ちたい」と笑顔で話していました。
 点訳奉仕員養成講座を実施している大阪市視覚障害者福祉協会点字友の会の赤松悦子<あかまつ・えつこ>会長は、平日の昼過ぎに点訳奉仕員養成講座を行うため、働いている若い人が参加しにくい現状があると、養成での課題を話してくれました。
 講師を務めたNPO法人・日本福祉学習センターの樋口咲季<ひぐち・さき>事務局長は、「もっと多くの人が点字に興味・関心を持ち、参加しやすい環境にすることで、視覚障がい者だけに限らず、支援を必要とする人たちへの手助けを行える人が増えていくのではないか」と語っていました。
 大阪市視覚障害者福祉協会の田中克人<たなか・かつと>事務局長は、「デジタル技術も進歩し、パソコンで入力した文字を点字に変換したり、パソコンの画面に映し出されている文章を点字で印刷できるようになった」と説明。「医学の進歩で視覚障がい者の高齢化も進展している。パソコンやスマートフォンを使いこなせない高齢者のためにも、点字は残さないといけない大事な文字だ」と強調していました。