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点字こうめい No.88

<特集2>
生きてつないだ瞽女唄を後世に
「最後の瞽女」小林ハルの最後の弟子 萱森直子さん



Q 瞽女の魅力とは
 寄席は漫才やコント、落語、講談などが集まって、一つの寄席が完成しますが、瞽女は寄席を一手に担っていた存在です。さらに、瞽女唄は人から人へ伝わってきたから著作権がなく、人によって歌い方や表現の仕方が全く違うため、アレンジや即興で毎回違う曲に変化します。瞽女唄に対して古い芸能のイメージを持つ人がいますが、伝わってきた人や、その時代とともに少しずつ形を変えている。聴けば聴くほど奥深くて魅力あるジャンルだと感じます。


Q 小林ハルさんとの思い出は
 個々の能力や人との縁など、人生において「授かりもの」を意味する「さずきもん」という言葉をよく使っていました。「お前の唄は『さずきもん』だ」「『さずきもん』さえ大事にしていたら、何があったって怖いことはない」と、よく言われました。ハルさんは多くの人が持つ〝見える目〟を授からなかったけれども、授かったものを大事にして磨かれた。その言葉から自信や誇りを感じ、今でも大切にしています。


Q 瞽女唄の演奏時や伝承活動で心がけていることは
 披露する際、独特の響きと迫力はとても意識します。瞽女唄がこれからも残っていくために、瞽女唄ならではの魅力を失わないことが大事だと思います。一方で、掟や身なり、慣わしといった〝瞽女らしい振る舞い〟はしないようにしています。私は瞽女ではないので、これまでの瞽女さんに失礼になりますから。


Q 瞽女への思い
 昔の視覚障がい者の働き口といえば、瞽女か按摩<あんま>かの2択でしたが、現在では就<つ>ける仕事の幅も変化している上、福祉制度も充実しています。瞽女という仕事がなくても生活できるようになった一方で、瞽女を復活させようと考えている人もいます。私は瞽女を復活させるより、瞽女の強く生きた証や瞽女唄の灯<ともしび>を絶やすことなく、発信し続けることが大事だと思っています。人から人へと伝わってきた瞽女唄を、これからも歌い続けていきたいです。