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点字こうめい No.83

④<話題>
見えない人の「おしゃれ」を支援
日本視覚障がい者美容協会


 目が不自由でも、おしゃれをしたい――。そんな思いを抱く視覚障がい者を手助けする取り組みが今、広がりつつあります。埼玉県上尾市で、おしゃれを通じて視覚障がい者を支援する一般社団法人「日本視覚障がい者美容協会」(JBB)を訪ねました。

 JBBは、2019年10月に設立。創設者は、現在JBBの代表理事を務める傍<かたわ>ら、上尾市内で視覚障がい者向けの出張型ネイルサロンを経営するネイリスト、佐藤優子<さとうゆうこ>さんです。創設のきっかけは、佐藤さんが介護施設で視力の落ちた高齢者のネイルケアをしていた時、「目が見えない人もおしゃれがしたいはず」と気づいたことでした。視覚障がい者のある若い女性たちに会い、「ネイルケアはどうしているの?」「髪のセットは?」などと聞いてみると、家族に選んでもらった服が派手すぎたことや、眉<まゆ>メークの失敗など、あらゆる場面でつまずいている現状が分かりました。「視覚障がい者は、目の見える周囲の人たちに指摘されて初めて失敗したことを知るのです」と語ります。

 そんな女性たちに臆<おく>することなくおしゃれを楽しんでもらいたいと、JBBでは、さまざまな支援に取り組んでいます。主な取り組みの一つは、音声配信メディア「Voicy(ボイシー)」で、目の不自由な人に向けて「音で読めるファッション雑誌」と題した番組を週2回、配信しています。火曜日は20~30代向け、土曜日は40~60代向けの雑誌を紹介。出版社の協力を得ながら、約10誌に掲載された服やメーク、アクセサリーの紹介文を読み上げるほか、流行やお手本となるコーディネートの紹介や、周囲に与える印象を解説し、視覚に頼らず自分らしい装<よそお>いを楽しむ方法を伝えています。

 番組では、「甘酸<あまず>っぱいベリーのようなピンク」「アスパラの肉巻きのように、持ち手をスカーフでくるくると巻いたバッグ」など、例えの表現を多用し、色やデザインを想像できるよう工夫を凝らします。リスナーは500人以上に上り、視覚に頼らずとも自分に似合う装いが分かると好評です。

 また、月に一度、アクセサリーや下着、靴<くつ>などの専門店を集めた買い物イベント「マルシェ」を、開催しています。白杖<はくじょう>を宝石のような石で飾ったり、指にネイルアートを施したりするサービスも、状況に応じて出店します。コロナ禍<か>になる以前は、東京都内のオープンカフェで実施していましたが、現在はオンラインで開催中。それでも、実際に店員から専門的なアドバイスを受けられ、コミュニケーションを取りながら購入できるイベントであることから、視覚障がい者にとって「買い物がしやすい」と喜びの声が寄せられています。

 このほか、希望する会員の都合に合わせて、ビデオ通話を活用したリモートメーク教室も定期的に開催。また、ファッション情報やJBBの活動内容を、動画サイト「YouTube(ユーチューブ)」やメールマガジンをはじめ、ツイッターやフェイスブックなどSNSを活用して積極的に発信しています。

 JBBの今後について佐藤さんは、「視覚障がい者の仕事支援にも取り組みたい」と語ります。視覚障がい者は、多くがマッサージの仕事に従事するなど、依然として職業選択の自由が少ないことが課題です。佐藤さんは、「『クラフトバンドワーク』という、紙バンドで収納カゴやバッグなどを作る手芸のビジネス化を考えています。これからも、視覚障がいのある人と社会をつなぐお手伝いをしていきたい」と意欲的です。