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点字こうめい No.82

④<話題>
障害者手帳をスマホで表示
アプリ「ミライロID」の利用広がる


 一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ(志村季世恵代表理事)が8月23日、東京都港区にダイバーシティー(多様性)をテーマにした日本初の施設「ダイアログ・ミュージアム『対話の森』」を開設しました。暗がりの空間で視覚以外の感性を研ぎ澄ましながら、「新しい対話」を楽しむことができる同施設を紹介します。

 障害者手帳の情報を事前に登録しておくことで、電車やバスなどの交通機関で手帳代わりに利用できるデジタル障害者手帳「ミライロID」の利用が広がっています。今年3月にはJRを含む鉄道事業者171社が導入を開始し、全国で1000社を超える事業者が「ミライロID」を本人確認書類として認めています。


 障害者手帳は、医療費負担の軽減や公共交通機関の運賃割引などの支援が受けられる一方、紛失や個人情報漏えいのリスクがあるほか、利用するたびに事業者に個人情報を見られることから、利用者の心理的な負担を指摘する声がありました。

 また、手帳のフォーマットが自治体によって異なり、その数は全国で265種類にも上ります。そのため、事業者にとっても確認作業が負担となっていました。現在、確認方法は事業者に一任されていますが、手帳の現物提示を求める事業者が多数を占めます。

 アプリを運営する株式会社ミライロの垣内俊哉(かきうち・としや)代表取締役社長は、車いす利用者でもあります。「ポイントカードのようにミライロIDで障害者手帳を提示できれば、障がい者や家族のプライバシーを守り、向き合う事業者の印象も大きく変えられる」と思ったことが、アプリ開発のきっかけになりました。2019年に国土交通省が交通事業者向けに障害者手帳の現物確認不要の通知を出したことを受け、同年7月にアプリを発表しました。

 ミライロIDでは、①手帳の種類②旅客運賃減額③マイナポータル連携の有無――の3つを、事業者がスムーズに確認できる仕様になっています。このほか、使用する福祉機器などの情報の登録、コンビニや飲食店などで使える電子クーポンも取得できます。

 ミライロIDは無料で使えます。iPhone(アイフォーン)は「App Store(アップ・ストア)」、Android(アンドロイド)端末は「Google Play(グーグル・プレイ)」からアプリをインストール。アプリの指示に従い、障害者手帳を撮影して画像データを送付します。ミライロIDのヘルプセンターがAIや目視による確認作業を経て、手帳情報の登録が完了すれば利用できます。端末の読み上げ機能を使えば、登録作業を音声でサポートしてくれます。なお、一つの障害者手帳を複数の端末に登録することはできません。

 ミライロIDでは現在、タクシー配車アプリと連携しています。配車を予約した際に、事前に乗務員に障がい者であることを知らせることで、円滑な乗車を実現しようとするものです。ミライロIDの提示による障がい者割引も適用されます。

 垣内社長は、「コロナ禍で新たな課題も発見できた」といいます。今、オンラインでチケットを購入できる時代ですが、障がい者は手帳の確認が必要になるため、有人窓口での購入しかできません。将来的に自動改札機でタッチするだけで障がい者運賃で鉄道などを利用できるよう、「ミライロIDと連携した事業を拡大していきたい」(垣内社長)と意気込みます。

 ミライロIDを利用している視覚障がい者の原聡(はら・さとし)さんは、「障害者手帳を人に見せたくないという思いがあったので、ミライロIDで心理的な負担がなくなりました。導入する事業者が増え、とても使いやすくなった」と話していました。