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点字こうめい No.81

④<話題>
暗がりの空間で語り合い、多様性を体感
ダイアログ・ミュージアム「対話の森」(東京・港区)が開設


 一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ(志村季世恵代表理事)が8月23日、東京都港区にダイバーシティー(多様性)をテーマにした日本初の施設「ダイアログ・ミュージアム『対話の森』」を開設しました。暗がりの空間で視覚以外の感性を研ぎ澄ましながら、「新しい対話」を楽しむことができる同施設を紹介します。

 施設では本来、視覚障がい者の案内のもと、漆黒の暗闇を体験し、人とのコミュニケーションや対話の大切さを体感する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と、聴覚障がい者が案内する「ダイアログ・イン・サイレンス」を実施する予定でしたが、現在、新型コロナウイルス感染防止対策のため、「ダーク」は明かりを付けた「ライト」と題して期間限定で実施しています。「ダーク」は1989年にドイツで始まった取り組みで、日本では99年の初開催以来、23万人以上が体験しています。

 「ライト」「サイレンス」共に、複数人のグループで体験します。

 「ライト」は、空間の一部に照明を付けた暗がりで、視覚障がい者のアテンド(案内人)を中心に、テーマに沿った対話が展開されます。120分の体験時間内に、「公園」「ノイズの森」「夜の高原」と名前が付いた3つの空間を巡ります。

 例えば「ノイズの森」では、参加者が身近に感じる「音」を語り合い、想像を巡らせます。「公園」の空間では、フィジカル・ディスタンス(身体的距離)を保ちながら、アテンドも交えた「遊び」や対話を楽しみ、「夜の高原」では、視覚に頼ってしまいがちな「景色」や「星空」について語り合います。

 中途失明で全盲の瀬戸洋平さんは、17年前に「ダーク」と出会い、現在はアテンドを務めています。瀬戸さんは、同施設で体験できる「対話」は「エネルギーのように光って見える」と表現します。
 「グループが暗がりの空間を巡る過程で、誰かがポツリと放った言葉は『点』のようなものですが、そこから皆さんの対話が始まると『点』は『線』となり、やがて『面』へと広がります。その『面』はさまざまな色に変化するように感じます」(瀬戸さん)。

 取材では、「ライト」を6人のグループで体験しました。初対面のため、皆、緊張した面持ちでしたが、対話を重ねるごとに互いの立場の違いを理解し、意見を聞く姿勢が変化していくのを感じました。体験後、参加者からは「『ノイズ』の話をしているのに、お互いの個人的な側面を垣間見ることができました」「街で困っている人を見かけたら声をかけたい」などの感想がありました。

 一方、「サイレンス」は、静寂な空間で聴覚障がい者のアテンドとともに、90分間、表情やボディーランゲージでコミュニケーションを体験できます。参加者は外部の音を遮断するヘッドセットを付けて参加します。サイレンスは11月23日まで体験が可能。

 同施設では2021年以降、年齢や世代を超え、生き方について対話する「ダイアログ・ウィズ・タイム」を実施する予定です。

 「ライト」「サイレンス」共に小学生以上から体験できます。料金は、大人3500円、中高大学生2500円、小学生1500円(いずれも税抜き)。事前にウェブ(https://taiwanomori.dialogue.or.jp)での申し込みが必要です。