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点字こうめい No.81

<特集>
〝福祉の党〟の機関誌「点字こうめい」ができるまで


 「点字こうめい」は1980年11月1日に創刊され、今回の81号は満40年の節目となります。発行は5月と11月の年2回。共生社会をめざす「福祉の公明」にふさわしい刊行物として、視覚障がい者に関する、さまざまな話題をはじめ、各界著名人による寄稿、社会で活躍する全盲や弱視の方々をクローズアップした人物紹介、公明党の政策・実績など多彩な情報を発信し続けてきました。今回は点字こうめいが読者に届くまでを紹介します。


▼企画から取材、原稿執筆

 点字こうめいは、党の機関紙・誌に掲載した内容の転載ではなく、全てオリジナルの原稿で構成されているのが特徴です。その制作の第一歩が、点字こうめい編集部の記者が集まり内容を検討するプラン会です。各記者からの提案を編集部のメンバーで議論し、どのテーマにするかを決定します。
 企画が決まれば、いよいよ取材です。有名人や芸能人への取材は、スケジュールが合わないこともあり、何人もの対象者に取材依頼をすることもしばしばです。
 また、取材は事前の準備で全てが決まると言っても過言ではありません。取材先についての下調べでは、経歴などのほかに、著作やメディアでの内容もリサーチした上で、取材時は事前に考えた質問項目をもとに話を聞きます。取材の結果、本来の〝狙い〟以外の部分の方が興味深く、構成を変更することもあります。
 その後、原稿の執筆に取り掛かります。取材時のメモや録音音声をもとに文章を組み立てていきます。内容の取捨選択や、どのような表現が読者に伝わりやすいか、文章の入れ替えや表現の変更など推敲を重ねながら、原稿が出来上がります。
 原稿が出来たら、「デスクチェック」です。編集長などの厳しい校正を経る中で、記事の書き直しや再取材を行うこともあり、さらにふさわしい文章へと修正され、原稿が完成します。
 私たちの原稿は社会福祉法人「日本視覚障害者団体連合(日視連)点字出版所」に点字化(点訳)をお願いしています。このため、点訳される際、読み間違えがないよう、読みにくい単語には、かっこ書きで読み仮名を添えておきます。


▼データ入稿から印刷まで

 日視連点字出版所ではパソコンを使って点訳しています。点字こうめいの場合はテキストデータの原稿をメールで送るため、入稿後、まず自動点訳ソフトで大まかに点字に変換します。
 しかし、そのままでは適切に点訳されない箇所も少なくありません。意味や発音を考慮して所々にスペースを入れたり、本来は「私は」と表記するところを、「私わ」に変換するなど、点訳独特のルールにのっとって、手作業で一つ一つ直していきます。
 点訳者のパソコンを見せてもらうと、画面には原稿が点字で表示されています。点字は一文字を六つの点で表現するため、点字タイプライターのように六つのキーを使って打ち込む方法を主に使用しています。
 こうして点訳された原稿は点字プリンターで紙に仮印刷された後、出版所の校正室へ。校正室では、2人が肩を並べて読み上げながら、確認作業をしています。ここでは、点訳された原稿と編集部から送信した原稿に訳し間違いがないか、点字を触読して読み上げる人と送信原稿を確認する人の2人がかりで読み合わせを行います。
 同出版所では、自治体の広報誌などの点訳も行っており、文字の間違いのほか、実物のデザインから、点字ではどの順序で紹介すれば伝わりやすいかを試行錯誤するなど、読者目線に立って校正を行っているそうです。
 校正を行い、問題がなければ、二つ折りにした亜鉛板に点字製版機で点字を打ち込み、原版を作成。その原版に専用の点字用紙をはさんでゴムローラーの間を通し、プレス印刷するエンボス加工と呼ばれる方法で印刷されます。同出版所では、両面に印刷しても点字が重ならない「インターライン式」という方法で印刷しています。
 ここで再度、仮印刷を行い、あらためて校正作業を行います。間違いが見つかった場合、点字データを修正するとともに、板金工のように原版をトンカチでたたき、亜鉛板を直します。こうした作業を繰り返して、原版が完成するのです。
 日視連には点字プリンターが3種類ありますが、その中には点字が読みにくいと読者が感じる機種があるほか、印刷に時間がかかるため、点字こうめいは手作業で印刷されます。同出版所の中山敬課長は「点字プリンターよりも手作業の方が早いことに驚く人は多い」と話しています。また、点訳化や印刷までの工程については、40年前の点字こうめい創刊当時から「印刷を手作業でするなど、基本的には何も変わっていない」といいます。
 「近年、点字を読める人が少なくなっていると指摘されていますが、点訳されたものは、ゆっくり読むことができ、理解も深められることから点字や紙媒体の出版物の根強いファンもいる」と中山課長は話します。その上で「点字こうめいは毎回、点訳しながら読んでいて、非常に興味深く、ためになる。公明新聞には点字こうめいの一部の記事しか掲載されないことが多いので、特別寄稿や視覚障がい者、サポートする方の活躍を紹介する『人間登場』などの記事が掲載されることで、視覚障がい者に関する情報をより多くの人に広く知ってほしい」と語っていました。


▼視覚障がい者の活躍知れる

 「点字こうめいは、社会全体の動きというよりも、視覚障がいに縁のある、市井のさまざまな立場の人がピンポイントで登場するため、私たち視覚障がい者にとってありがたく、活用しやすい」。こう語るのは東京都世田谷区に住む大竹博(56)さんです。10年ほど前に地元公明党区議から紹介を受けて以来、点字こうめいを愛読しています。大竹さんは、「点字こうめい最新号のデータは公明党のホームページでも公開されていて、急いでいる時などは読み上げソフトを利用できるので便利」と話しています。「今後はICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を活用した視覚障がい者の駅ホームでの転落事故を防ぐ取り組みを、点字こうめいでぜひ取り上げてほしい」と要望を寄せました。