情報通信技術(ICT)を生かした支援広がる
情報通信技術(ICT)を活用して、視覚障がい者を支援する動きが広がっています。一般社団法人「PLAYERS」<プレイヤーズ>(主宰<しゅさい>・タキザワケイタさん)も、その一つです。同法人の活動を追いました。
PLAYERSは、社会人が自らの専門知識や技能を生かして社会貢献する〝プロボノ集団〟です。「プロボノ」とは、ラテン語で「公共善<こうきょうぜん>のために」を意味する「プロ・ボノ・プブリコ」の略で、近年、日本でも注目を集めています。2017年11月に設立された同法人は、19年3月現在、約25人のメンバーが所属し、全員が別々の本業を持ちながら、「一緒になってワクワクし世の中の問題に立ち向かう」とのスローガンを基に、活動しています。
もっと自然に、困っている人へ手を差し伸べられないか――。活動のきっかけは、タキザワさんの家族が電車で席を譲<ゆず>ってもらった体験です。「困っている人に手(ハンド)を差し伸べ、取り合われた手と手から安堵(アンド)を広げていきたい」。そんな思いで、タキザワさんは活動の輪を広げてきました。
PLAYERSが展開するプロジェクトの一つが「&HAND」<アンドハンド>です。これは、身体的・精神的に不安や困難を抱<かか>えた人と、手助けしたい人を結び付け、具体的なサポートを後押しする取り組みです。
「&HAND」は、「妊婦向け」「車イス・ベビーカー向け」「視覚障害者向け」「聴覚障害者向け」――など、対象者ごとにサービス開発を進めています。
「視覚障害者向け」では現在、「mimamo」<ミマモ>と、「VIBLO」<ヴィブロ>の、2つのプロジェクトが進んでいます。
「mimamo」は、社会全体で見守りサポートし合える仕組みを模索<もさく>し、視覚障がい者が安心して外出できる社会をめざしています。18年9月から、JR東日本や視覚障がい者と協力し、体験会や試作品の開発などを行っています。
視覚障がい者が外出した際、駅で困った時に専用の装置を使うと、事前に登録した駅員やサポーターが持つ、スマートフォン(スマホ)のアプリ「LINE<ライン>」に通知が届き、直接、視覚障がい者と手助けする人をつなげてくれる仕組みです。19年3月末には、首都圏の駅で実証実験を実施しました。
一方、「VIBLO」も注目されています。
これは、発信機を内蔵した点字ブロック「VIBLO BLOCK」<ヴィブロ・ブロック>とAI(人工知能)を搭載<とうさい>したスマートスピーカー、スマホのアプリ、さらに市販のワイヤレスイヤホンを活用し、視覚障がい者の外出を音声でサポートするものです。
スマートスピーカーで目的地を設定し、出発地から目的地までの道順を登録。道順の情報を、LINEを通して文字が判読できる人向けに通知するほか、「VIBLO BLOCK」が設置されている場所に近づくと、周辺情報と次のVIBLO BLOCKまでの道案内を音声でしてくれます。家族や友人が、スマートスピーカーを使い、視覚障がい者の現在地を問い合わせたり、LINEのビデオ通話機能を使ってサポートすることもできます。
現在、JR西日本と連携し、23年に開業予定の「うめきた(大阪)地下駅」(仮称)での事業化をめざして検討を進めています。
活動する中で、〝障がいはハンデではなく個性〟と考えるようになったというタキザワさん。「障がいがあるからこそ、生み出せる価値がある。『やさしさから、やさしさが生まれる社会』の実現をめざしたい」と力を込めて話していました。