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点字こうめい No.77

<話題>
パラスポーツ専用の体育館オープン

魅力を発信する拠点にも活用

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、東京都品川区に今年6月、パラスポーツ専用の体育館「日本財団パラアリーナ」がオープンしました。同体育館を訪問するとともに、日本のパラスポーツの現状を追いました。

 「日本財団パラアリーナ」は、新交通ゆりかもめ「船の科学館駅」で下車し、徒歩数分。公益財団法人「日本海事科学振興財団 船の科学館」の敷地内に開設されています。

 取材で訪れた日は、施設が一般公開され、多くの人がクイズラリーや、ゴールボールなどのパラスポーツを体験していました。入り口の床には「i enjoy!<あい えんじょい>」「楽しむ人は、強い。」との文字が。スポーツ本来の〝楽しさ〟を忘れないでほしいと思いから書かれたといいます。

 パラアリーナは、アリーナやトレーニングルーム、会議室などの機能を併<あわ>せ持つ施設です。アリーナの広さは約2000平方メートルあり、ゴールボールやブラインドサッカーの練習にも利用できます。施設の担当者は「床もワックスを厚くし、汚れにくくしています」と説明してくれました。

 施設にはユニバーサルデザインが積極的に取り入れられ、パラスポーツ選手が利用しやすい工夫がいくつも施<ほどこ>されています。例えば、施設の壁や床の色は黒と白を基調とし、コントラストを高めることで、弱視の人も判断しやすくしているほか、トイレやトレーニングルームの扉<とびら>には点字が付いています。

 また、競技用車いすが通行しやすいように幅広いスライド扉に加え、車いすに乗ったまま使用できるシャワールームやトレーニング器具などを設置。無料の駐車場も併設<へいせつ>しています。パラアリーナは東京パラリンピックで実施される22種目の競技団体や、団体所属のクラブチームなどが無料で利用できます。

 日常的に使える練習場所の確保が難しい――。パラスポーツ界では、その競技の特性から施設の床や壁を傷付けてしまったり、練習に必要な設備が不足するなど、多くの選手が〝練習場所の確保〟を悩みとしています。

 08年の北京<ぺきん>パラリンピックに出場した、ゴールボールの高田朋枝<ともえ>選手も、その一人です。高田さんはパラアリーナをトレーニングで月1、2回利用しているといいます。

高田さんは「公共の体育館などでは、ボールを体育館の壁に当ててはいけなかったり、他の利用者にボールが当たる可能性もあるので、練習が制約されてしまうことが多い」と話します。こうした声に応え、選手が練習に集中できる環境を整備し、パラスポーツの魅力<みりょく>を発信する拠点<きょてん>にしようと開設されたパラアリーナ。今では多くの選手が連日汗を流しています。毎月の利用者は延べ500人を超え、施設の稼働率<かどうりつ>は90%以上と好調です。

 高田さんは「施設がシンプルな構造で、色のコントラストもあるので、とても利用しやすい。ただ、車いす利用者のためにスペースを広く確保している部分もあり、初めて利用する視覚障がい者の中には、困惑<こんわく>してしまう人もいるかもしれない」と率直な感想を教えてくれました。

 公益財団法人日本パラリンピックサポートセンターの担当者は「今後、利用者の声を聞きながら、フロアマップの触知<しょくち>案内図の設置など、より多くの人が使いやすい施設にしていきたい」と話しています。

 「日本財団パラアリーナ」を利用するには、ホームページ(https://www.parasapo.tokyo/paraarena/)で事前の登録と予約が必要です。開館時間は午前9時から午後9時半まで。視覚障がい者の方には、電話でも受け付けています。お問い合わせは、日本財団パラアリーナ事務局(☎03・5500・0825)まで。