HOME > 商品詳細2

点字こうめい No.76


<話題>
安心して歩行できる誘導路
注目集める「歩導くん ガイドウェイ」

 視覚障がい者が安心して歩行できるよう道案内してくれる誘導路<ゆうどうろ>「HODOHKUN Guideway」(歩導くん ガイドウェイ)が、全国の公共施設や病院内で採用され、注目を集めています。2016年には国際的なデザイン賞も受賞。開発の舞台裏を追いました。

 誘導路は「病院内でせめて病室からトイレまで誘導してくれるマットがほしい」と、中途失明者が考案しました。その後、改良を重ね、現在の「歩導くん ガイドウェイ」が開発されました。製造・販売を錦城護謨<きんじょうごむ>株式会社(大阪・八尾市)が、デザインを株式会社リプルエフェクト(愛媛・松山市)が担当しています。

 「歩導くん」の特徴は、表面の凹凸<おうとつ>がなく、設置が簡単なことです。白杖<はくじょう>で叩<たた>いた時の音や感触の違い、踏み込んだ時に足から伝わる感覚で、床との違いを認識することができます。中央部分の厚みは約7ミリメートル。車いすでもスムーズに乗り上がるよう、誘導路と床との境界部分は1ミリメートル以下と、ほとんど段差がなく、中央部分から床に向かって、緩<ゆる>やかな傾斜<けいしゃ>がついています。

 誘導路の開発は、試行錯誤<さくご>の連続だったといいます。株式会社リプルエフェクトの山田敬宏社長は「私は健常者なので、想像できないことを想像して、デザインすることが難しかった」といいます。視覚障がい者がどのように白杖を使っているのか、街で白杖を使っている視覚障がい者を何度も観察して、デザインを考えていたと当時を振り返っていました。開発メンバーに外部の視覚障がい者と肢体不自由者(車いす利用者)を招き、さまざまな意見を積み重ねて、現在のデザインになったそうです。

 標準6色に加えて、事前に調整すれば100色以上と、カラーバリエーションも豊富です。誘導路と設置する建物や床の色とのコントラスト比を高めることで、弱視者も視認<しにん>しやすくなり、建物のデザイン性を損なわない効果もあります。さらに、表面にシールを貼るとピクトグラム(絵文字)や文字表現も可能で、トイレやエレベーターなど、視覚障がい者以外の利用者を導く目印としても活用できます。「歩導くん」の屋内での使用については、「バリアフリー法などに照らしても問題ない」(国土交通省)ということです。

 「歩導くん ガイドウェイ」は、これまでのシリーズと合わせて、すでに全国900カ所以上の公共施設や病院、屋内施設に設置されています。ある県立病院では、以前、病院の入り口から受付まで点字ブロックを設置していましたが、点字ブロックの凹凸で、リハビリ中の患者らがつまずくことが多かったため、入り口から総合案内所までの誘導路として、「歩導くん」を導入。現在、つまずく人はいなくなったといいます。

 2016年には、世界3大デザイン賞の一つ「iF Design Award<アイエフデザインアワード>2016」の「プロダクト部門・公共デザイン」において、日本初の金賞を受賞。審査員からは「視覚障がい者のための触覚<しょっかく>で分かる誘導路、それ自体が革命」と評価されました。

 錦城護謨株式会社の担当者は「『歩導くん』をきっかけに、視覚障がい者だけでなく、通行する全ての人が安全・安心に歩行できるよう、バリアフリーを考えるきっかけになってほしい。まずは、20年の東京五輪・パラリンピックに向けて、もっと広めたい」と話していました。