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点字こうめい No.74

2<特集>インタビュー
・髙栁友子・日本身体障害者補助犬学会理事、日本介助犬協会常務理事に聞く

人権意識を浸透<しんとう>させ助け合う社会へ

――身体障害者補助犬法の施行から15年を迎えます。

髙栁友子理事
 法律ができたことで、補助犬を同伴した行動が「お願い」から「権利」に変わったことは大きな前進と言えます。しかし、補助犬の認知度はいまだ低く、政府や自治体、関係団体が一丸<いちがん>となった周知が必要です。

 特に、補助犬の同伴を拒否する飲食店や医療機関がまだあり、トラブルも少なくありません。

――どうして同伴拒否がなくならないのでしょうか。

髙栁
 同伴を拒否する人たちの補助犬のイメージは、街中で見かける犬の姿なのでしょう。しかし、補助犬はきちんと訓練を受けており、利用者にも補助犬にブラッシングやシャンプーなどのケアを行うよう徹底されています。

 ただ、同伴拒否の根底には、受け入れる側の漠然<ばくぜん>とした不安があるため、補助犬を実際に見てもらう機会をこれからも増やしていかなければならないでしょう。

――一方で、盲導犬使用者の鉄道駅ホームからの転落事故が相次いでいます。

髙栁
 一連<いちれん>の事故を受けて鉄道事業者はホームドアの設置や駅職員の増員など、より一層の対策を講<こう>じるようになりました。

 しかし、私たちは、鉄道事業者側にのみ対応を任せる姿勢でいいのでしょうか。20年東京五輪・パラリンピック開催時には、世界中から多くの障がい者が日本を訪れます。周<まわ>りにいる他の乗客が率先<そっせん>して手助けする環境づくりが必要です。

――東京五輪の際、外国からの「補助犬」を連れた障がい者が多く来日すると考えられます。

髙栁
 海外の「補助犬」ユーザーも日本国内では補助犬法が適用されます。米国のADA法(障がいのある米国人法)で認められている「アシスタンスドッグ」を同伴して入国しても、日本で認定された補助犬の使用や、表示義務などのルールを守らなければ、受け入れを拒否されることもあります。このため、補助犬法を英文化するなど、訪日外国人への徹底が必要です。

 また、狂犬<きょうけん>病の清浄<せいじょう>国である日本に狂犬病を持ち込ませないための水際<みずぎわ>対策の強化も重要になります。

――今後、社会に求められることは。

髙栁
 人権意識を社会に浸透<しんとう>させることが必要です。障がい者にとって、補助犬は体の一部と同じ存在です。

 障がい者の社会参加や自立を促すには、さまざまな方法を選ぶ自由に加え、本人の意思が尊重されなければなりません。それが補助犬法や「障害者差別解消法」がめざすところです。

 こうした人権意識を社会に浸透<しんとう>させずに、「スロープを付ける」とか「点字のメニューを用意する」といった各論<かくろん>的な解決策では、根本的な解決には至<いた>りません。各論的な対応策を全て整<ととの>えたとしても、全ての人にユニバーサルということはありえないと私は考えています。

 私たちの誰もが障がい者になる可能性があります。人ごととしてではなく、障がい者にとって優しい社会とは何かを、一人一人が考えていくことが大切ではないでしょうか。