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点字こうめい No.73


<特別寄稿>
『サッカーで夢を与える人をつくる』

  日本障がい者サッカー連盟会長 北澤豪(きたざわ・つよし)氏

 今年4月、日本ブラインドサッカー協会など障がい者サッカー競技の7団体を統括<とうかつ>する「日本障がい者サッカー連盟」が設立され、会長に就任しました。

 現役時代から障がい者サッカーに関わってきましたが、障がい者アスリートから学ぶことは、すごく多い。特に心の強さは、プロ選手だった僕よりもずっと上。人間力が違うと感じています。もし子どものころに出会っていれば、違うサッカー人生があったかもしれません。だから、もっと世の中に彼らのことを知ってもらいたい。きっと、それが多くの選手の成長の動機になると思います。

 7団体を統括する連盟は、日本サッカー協会と連携していく、いわば一つのファミリーです。だから、「日本代表」のユニホームは同じものを使いたい。障がい者サッカーにもワールドカップのような世界大会があります。そこに同じ「日本代表」のユニホームを身に付けて挑む姿が、選手の動機付けになります。周囲から見ても分かりやすいので、サッカーの種類に関係なく「応援しよう」という空気が生まれるのではないでしょうか。

 障がい者サッカーのレベルを上げていくためには、競技の普及や選手育成の環境整備を進める必要があります。ただ7団体はいずれも規模が小さいので、経済面でも技術強化面でもまだ十分な体制となっていません。そこで、連盟の理念に掲げる「共生<きょうせい>社会の実現」を一緒にめざす企業6社とパートナーシップ契約<けいやく>を結び、10月5日に発表しました。資金面などで支援を受けながら、障がい者サッカーをサポートしていきます。できれば「日本代表」が合宿できる常設の設備も整備したい。

 ブラインドサッカーでは、目が見える人がゴールキーパーを務め、「コーラー」と呼ばれる人がシュートのタイミングなどを声で伝えるなど、視覚障がい者と健常者が一緒になってプレーします。これは、まさしく共生社会です。

 発展途上国の紛争地帯では、足がない子どもも、みんなと一緒に勉強や生活をしています。その子がミスをすると、「お前が、足がないからだ」と言ってしまう子どももいますが、それでも当たり前のように足がない子どもを手助けしています。それは、いつも一緒<いっしょ>にいるからできることです。障がい者と健常<けんじょう>者が混<ま>ざり合っているから、分かり合える。そうでないと、何ができて、何ができないのかが分かりません。だから共生社会が必要なんです。それを分かりやすく感じられるのが、スポーツだと思います。

 障がい者アスリートのプレーを見て、「障がいがあるのに、すごい」という話で終わらせてはいけないと思います。その「すごさ」を、どう生かしてあげられるのか。社会でどういう支援や環境が必要なのか。彼らの努力を、もっと生活支援につなげられるようなスポーツにしていく必要があります。

 徐々に視力が落ちている子どもを、親がブラインドサッカーのグラウンドに連れてくることがあります。もし目が見えなくなっても、「こういうサッカーがある」と教えるために。沈<しず>んでいた子どもの顔がパッと明るくなったのを見たとき、障がい者アスリートの存在の大きさを感じました。彼らが、そういうヒーローであることも忘れてはいけないと思います。

 サッカーをやってきて一番スポーツの力を感じたのは、プレーで何かを達成したことよりも、その瞬間に僕よりも喜ぶ人たちがいたことです。その中には、今の障がい者アスリートたちもいたでしょう。彼らが頑張れたのはプロとしてプレーする僕らがいたから。同時に、僕らが頑張れたのは彼らがいたからこそ。彼らはこれから、かつての僕らのように、人に夢を与える立場になります。そうやって歴史がつくられていく。それがスポーツの力であり、サッカーの力だと思います。